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兄弟の国-台湾と中国の関係にかかる私見
2014-06-20 00:00:00
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◎辜寬敏

  台湾はユーラシア大陸の東南に位置し、広大な太平洋に浮かぶ美しい島です。この島は約400年にわたり、オランダ、スペイン、清国、日本、中華民国などの植民地支配や統治を経験してきました。台湾に住む人々は、このような過酷な歴史を背負いつつも、お互いを人種や言語、文化で区別することなく、苦楽を分かち合いながら一つの運命共同体を作り上げてきました。この島の主として、台湾人は自らの運命、前途を決める権利を持っています。
  対岸に位置する中国は、台湾にとって重要な国であり、その行く末はわれわれの未来にも大きな影響を及ぼします。しかしながら、現在の馬英九政権の対中政策は、多くの人々に懸念や不安を抱かせています。また野党の民進党は、内部の意見がまとまらず、明確な対中政策を打ち出せずにいます。
  私は、台湾社会が一刻も早く対中政策について共通の認識を持つべきだと思っています。共通の対中認識がなければ、台湾人は如何にして中国と協議や交渉を進め、また、如何にしてこの難題に立ち向かうことができるのでしょうか。まず台湾内で共通の対中認識を構築し、そして中国との交渉に臨むのが順序だと考えます。
  台湾では、自国の名称を「中華民国」、或いは「台湾」とするかをめぐって、今なお意見が分かれていますが、台湾人の多くが、自国を「独立した民主的な国家」であると認識している点は間違いありません。「自由」、「自主独立」、「民主主義」は、台湾人の持つ基本的な価値観です。台湾の利益に合致するとの大前提の下、社会全体の共通認識を作り上げ、中国と平和・対等な互恵関係を如何に構築するか、台湾の政治エリートの知恵が試されています。
  他方、中国は、台湾が過去半世紀に築き上げてきた政治体制、経済システム、社会制度、生活習慣を直視しなければなりません。更に重要なのは、台湾の主流民意は、台湾と中国の関係について「互いに隷属せず」、「互いに統治せず」という状況が好ましいと考えていることです。友好的で緊密な協力関係を築いて双方の発展を目指す上で、これらの視点は不可欠な要素です。 
  現時点で中国、台湾が示している両岸問題の解決案は、いずれも国内の共通認識を得ているとはいえません。双方が合理的に、なおかつ経済的にも「ウィン・ウィン」の関係を築くことができる受け入れ可能な案を検討すべきです。
  台中間の論争を終わらせ、かつ双方が受け入れ可能な新たな案として、私は「兄弟の国」という概念を提起します。台湾と中国がこの「兄弟の国」を基礎に議論を深め、平和的なパートナー関係を創造していくことを期待しています。
  両岸が「兄弟の国」となれば、お互いの尊厳を認める対等な関係となり、共に繁栄する新たな枠組みを改めて見付け出すことができると考えています。そもそも両岸には「親近性と特殊性」があり、これが互いの距離を近づけ、双方の関係改善に役立つことは明かです。
  台湾は、中国の台頭に向き合い、両岸問題を適切に処理し、双方の友好関係を構築しなければならないと認識しています。「兄弟の国」の概念は、台湾と中国の間には特殊な関係があると認めた上で、双方が善意を持ち、対等・平和的な協議によって、直面する問題を討論しようということです。グローバル化の時代において、対立は発展の障害となるだけです。現代国家が交流する上で重要なのは、共存共栄の追求です。
  世界的な観点から見れば、台湾と中国の関係は決して複雑ではありません。両岸の人々が互いに知恵を出し合い、対立の歴史を捨て去り、「世界みな兄弟」といった広い心を持って向かい合う。グローバル化が進む中、この「兄弟の国」を基礎に長期的な関係を構築すれば、双方にとって利益となるところがあるでしょう。
  2010年3月、中国の温家宝首相は、両岸ECFA協議に関する記者の質問に対し、中国と台湾を「兄弟」と位置付ける概念を示しました。2013年2月に北京の人民大会堂で連戦・国民党名誉主席と会見した習近平総書記も「兄弟が心を一つにすれば、何事もできる」と強調しています。ここからも台湾と中国を「兄弟の国」になぞらえることは、両岸では一般的な考え方だということが分かります。台湾と中国は、お互いが憎しみ合って対立し、争うべきではなく、平和・対等の互恵関係を築くことが、双方人民の利益に適う最良の選択となります。
  「兄弟の国」という概念を通して、中国との新たな関係を構築することを願います。台湾と中国が対等にして、良好な相互関係を築いてこそ、東アジアの平和と安定に資することができます。各国が激しい国際競争に直面する中、台湾と中国の人々は「兄弟の国」の基礎の上に、知恵を出し合い、より多くの問題で協力をすべきです。両岸の相互理解や信頼醸成のみならず、長期間にわたって積み重なった双方の誤解を解くことにも繋がります。これは両岸の共通の望みでもあると信じています!
(2013年11月)